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2013年12月18日 (水)

ディスクにスピンをかける理由(物理学編)

10年くらい前、バウンドバウの会員に航空力学に詳しい方がいました。
ディスクが何故飛ぶのかを分析していました。
私の意見と食い違うところもありましたが、ほぼ同じ意見でした。
その理論について理解すれば、どうしてディスクにスピン(回転)が必要なのかが、
理解できると思います。


ちょっと難しい話しになってしまいますが、お付き合いをお願いします。

航空力学の中に揚力というものがあります。
物体が浮き上がる力のことです。
飛行機の場合、翼の形が上側の曲面が下側より曲面より丸くなっています。
翼の上を流れる空気の速度と、翼の下を流れる空気の速度に差があります。
上側の方が距離があるため、空気の流れる速度が下側より早くなります。
その結果、翼の上側の気圧が低くなって、上に引っ張る力が生まれます。
これが、揚力です。

話をディスクに戻しましょう。
ディスクの形を見ると、上側が飛び出すように丸くなってます。
この形が揚力を生み出すわけです。
では何故スピンをかけたほうが良いのでしょうか。

こんな方程式があります。
これは、揚力の大きさを計算する方程式です。


L = {1 \over 2} \rho V^2 S C_L

L(揚力)=ディスクの浮く力
p(流体の密度)
V(速度)=ディスクの速度(回転)
S(面積)=ディスクの大きさ
CL(揚力係数)=ディスクの傾き


ディスクの場合は一枚の回転翼と考えることができます。
トスの場合で考えると、
揚力(L)を大きくするには、ディスクの場合(p)は一定として、
(V)ディスクの速度、(S)ディスクの大きさ、(CL)一枚の回転翼なのであまり影響なし。
の数値を上げれば揚力が上がります。
ディスクの場合は揚力=ホバリング(浮く)と考えていいでしょう。
ディスクの大きさも決まっています。
この方程式を使えば、あとは、ディスクの速度を増してやるしかありません。

ここで、ディスクの速度について考えて見ましょう。
前記したように、ディスクを一枚の回転翼とみなすと、
『(V)ディスクの速度=回転の速度』
ということになります。
小型犬がよく使っている、小さなディスクが、なぜ揚力(ホバー力)が小さいかというのは、
(S)の面積(ディスクの大きさ)が小さいからです。
小さいディスクほど回転を上げないと揚力が足りなくなってしまうのです。

スローイングになると、前の2項目V(ディスクの回転)とS(ディスクの大きさ)の他、
CL(揚力係数)が関係してきます。
ディスクの回転と、前に進むことでおこる揚力係数の2つからおこります。
ノーズアップするほど揚力係数は上がります。
そして一定の角度を超えると揚力係数が下がり揚力が失われます。
これが、飛行機などにもおこる、失速という状態です。
ノーズアップしたディスクの推進力が弱くなると、一気に落とされてしまうのを
見た方も多いと思います。
揚力係数(CL)で揚力を得るのは、ディスクの場合あまり得策ではないようです。

以上の理由から、ディスクにスピンをかける事が揚力を上げる
一番確実な方法だという事が分かります。


もう一つ。
ディスクを遠くに飛ばすには、推進力を確保するため、
前面投影率(前から見た面積)が小さいほうか有利です。
具体的には、エッジが薄く、ボトム(上のふくらみ)が少なく、
サイズが小さいことが必要です。
当然、ディスクのスピードが上がってきます。
これらをやりすぎると、揚力の低下になり、飛ばなくなってしまいます。
極端なノーズアップも空気抵抗が増えてしまい遠くに飛なくなってしまいますます。


ついでにもう一つ。
スローイングでディスクが前に進んでいくと、右側と左側で揚力に差が出てきます。
右回転(時計回転)のディスクの場合、投げてから見て左側の揚力が大きく、
右側が小さくなります。
ディスクの回転で生じる揚力に、さらにディスクが前に進んでいく時に発生する揚力が、
加わるためにおこります。
ディスクの左側が浮き、右側が沈んで、
ディスクは右側に傾いて落ちていきます。
その特性を補うため、ディスクを左側に傾けて投げるハイザースローを使うわけです。
「ディスクを立てる」などの言い方をしています。


難しい話を長々と書きましたが、
ここに書いた理論は、航空力学をもとにディスクに当てはめたものです。
私の考えを書きました。
専門家ではありませんので、違う部分もあるかもしれません。
実際にはディスクの重さの違いなど、慣性の法則も影響してきます。
完全なものではありませんが、参考になれば幸いです。

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